世界でいちばん遅い急行に丸一日乗る価値
20世紀初め、ツェルマットとサンモリッツは国際的な保養地に育ち、1930年、両地を結ぶ鉄道会社が直通列車の運行で合意しました。最初の氷河特急は1930年6月25日にツェルマットを出発し、サロン車と食堂車を連ねていました。その後半世紀は夏だけの運行でした。毎年秋になると、雪と雪崩でフルカ峠越えの線路が閉ざされたからです。1982年6月26日にフルカ・ベーストンネルが開通して、ようやく通年の列車になりました。
路線は全線が軌間1 mで、本線ならトンネルで抜ける場所を、あえて登っていきます。平均時速は42 km、最急勾配は12.5%。291 kmの旅がほぼ丸一日かかる理由で、運行会社が今も「世界でいちばん遅い急行列車」という昔ながらの呼び名を掲げるゆえんです。1980年代からは、斜めの脚のグラスでワインを出しています。登り坂でも飲み物が水平に保たれるためです。
最も見事な技術は、最後に待っています。1903年に開通し、1904年にサンモリッツまで達して、2008年からUNESCO世界遺産になっているアルブラ線は、トゥージスからサンモリッツまでの61.67 kmで列車を1,078 m持ち上げます。橋144、トンネル42を経て、ラック式は1 mもありません。建設者たちは、ベルギュンの上で螺旋トンネルや環状トンネルで線路をぐるりと折り返して高さを稼ぎ、ランドヴァッサー橋を峡谷越しに崖へ架けました。1993年からは、屋根まで窓を張った車両になり、山々を頂上まで見渡せます。












